アルクフェニックス その2


上出大輔が加わって、本格的な企画会議が始まった。
自分としては、大きな役目を果たせた気になってすでに満足していた。

上出は、立ち上げたばかりのTEATORAの合間を縫ってアルクフェニックスの企画会議に参加していた。

上出のストイックなものつくりの姿勢には、フェニックス陣も自分もびっくりした。
アルクフェニックスのマークをデザインしたのは上出である。

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「歩」という漢字を家紋のようにデザインした。
丸の中に「歩」という漢字がデザインされていて、よく見ると路地のように見える。
道を表している。
マークにメッセージがこもっているわけだ。
さらに、8つの漢字で機能性を表現。徹底的に日本語を使ってコンセプトを表現している。
ストイック上出のこのアイデアには驚いた。

日本のブランドなんだから、日本語でいきたいという自分らの考え方のさらに上を考えていてデザインに落とし込んだわけである。

上出はさらに、テキスタイル担当の池上部長と革新的な素材開発に挑んで、オタクすぎる服作りを進行していく。

もうこの後は、自分はプロダクト会議に出る幕はなくなってしまった苦笑。

自分の役割は「アルクフェニックス」と言うブランドを世の中にひろめていくためのビジュアルをイメージ化していくこと。

でも、ブランド立ち上げから関わってきたわけだから、ディレクションすることに関してはしっかりビジョンは見えていた。

仕事仲間であり、自分の良き理解者、カメラマン杉崎勝己を起用し、ルックのスタイリング撮影とムービーの制作をした。

「歩くための機能服」として、アルクフェニックスの世界観と、どういったウエアなのか?をわかりやすくわかってもらうためのビジュアルイメージ。

ファッションウエアだけではなく、スポーツウエアだけでもない。

でも用途はしっかりとあるウエア。都会にも馴染むし、山も歩ける機能性。

歩くためのウエア。

コンセプトやイメージはしっかりと想いがあるので、下手な言葉で一生懸命に伝えて、ストーリーアイデアを説明して、後はカメラマン杉崎にムービーの撮影ディレクションは託した。

モデルにはザ・日本人!的なイメージの、山本一賢(かずたか)くんにお願いした。

駒沢のバスケ専門のセレクトショップRYZMオーナー広田に紹介してもらった、元ストリートバスケットボールプレイヤー。

彼とは、以前ブルータスのファッションスタイリング撮影で、そのままバスケットボールプレイヤーとして、モデルになってもらい、知り合って、キャラクター性を気に入ってアルクのイメージモデルになってもらうことをお願いした。

彼は、プロのモデルでもないのに、とても真面目に楽しんで役になりきってくれた。

新宿という(大都会)から、歩いて歩いて歩いて、多摩川という(自然)ゴールに歩いていくというストーリー。


都会的機能服とアウトドアウエアのイメージを表現したかったってわけだ。


我ながら思い入れのある作品となった。口出ししかしていないけれどw。

作ったのは山本シットとチーム杉崎だから。

自分を合わせてたった4人で、この作品を作ることができた。

この後は、さらに様々な作品を作った。

本当はすべて山本シットで行きたかったけれど、予算的な問題もあったり、撮影1週間前から山本シットと連絡が取れずに急遽代理で、佐野君というモデルを広田に探してもらってお願いしたムービー撮影もあった。佐野君には本当に感謝している。

山本シットは結構な病気で入院していたらしい。





これも気に入っている作品の一つ。


季節や時間帯に合わせて、気温も歩いた距離によって体温も変わる。
それをスタイリングで表現したかった。

杉崎はスタジオで雨を表現するために雨システムを考えてきてくれた。

自分のアイデアをそのまま映像化してもらえたからとても嬉しかった作品の一つ。


誰かに伝えたくって、知ってもらいたくって、理解してもらいたくって、という想いが籠っている。


これは、大都会東京の隅田川をまたぐ橋を歩いて味わう というストーリー。

撮影のクライマックス、警察5人に囲まれ、なんでか?と問うと「ドローンを飛ばしてる人がいる」と通報があったからと言われ、ドローンなんて飛ばしてないし!機材が特殊なものだったから勘違いされたみたいで。。
そんなこともあり、最後は、綺麗な夜景の橋がズームアップされるカットで終わらせたかったのに撮る暇がなかったなんとも惜しい作品となってしまった。


アルクフェニックスのスタイリングに関してのこだわりは、

1、必ずハイテクランニングシューズを履かせる。

2、ウルトラライトなバックパックやサコッシュなどのアウトドアアイテムをミックスする。

という二つをこだわった。

ブランドのイメージ的には重要なポイントなのだ。

できれば、週末などにトレランや、U.L.ハイカーとして山を嗜んでいるビジネスマンや学生の普段着として来てもらえるようなブランドになってもらいたいなという思いもあったり。。


最近はムービーが当たり前のような時代になった。どんどん映像で表現する時代が当たり前になっていくんだろうな。


ムービーでもスチール(写真)でも

やはり自分の表現の仕方は、スタイリングで表現するってことが一番向いていると思うし、一番好きな仕事なんだなあと思った。

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